“EC RESPONSIBLE” ARE LONELY, BUT NOT ALONE. ーーEC担当者の孤独・メンタルヘルス・コミュニティについて
2019年は、自社ECのリニューアル問題(リライトする予定)、EC・デジタルのスタープレイヤー・有力経験者を採用できない問題、ビジネスにおける倫理観問題について言及しました。
過去にも言及しているのですが、今回は、「小売業やメーカーにおけるEC・デジタル担当者の孤独・メンタルヘルス、そのために必要な仲間・コミュニティについて」です。
前提として補足すると、私は弱音を吐いたり、ネガティブな考え方は好きではありません。ただし、現実を知っていただきたいのと、私ができることはやっていきたいということで書いております。
ある意味、全国で戦っているECやオムニチャネル、DX推進担当者への応援レターでもあります。
DX・OMO推進により担当者は、さらに孤独に
実店舗メインの小売企業やメーカーの中で、ECを推進するのも骨が折れるのは周知の通りです。しかし、仮にEC事業を拡大することができたとして、次にぶつかる壁が「オムニチャネル、OMO」や「デジタルシフト、デジタルトランスフォーメーション(DX)」です。
それまではEC事業に専念すればよかったのが、ある時から店舗営業、店舗フォーマットや出店、生産、物流、マーケティング、全社のシステムなどの部門を巻き込んで仕事をする必要性が出てきます。EC最適から全社最適のための仕事に切り替える段階で、自部門の判断だけでは物事を進められなくなってきます。
EC事業では責任者として裁量をもって仕事をしていたとしても、全社的なスケールになってくると、施策やツール選定・開発の優先順位が変わってきますし、意思決定や発案から実行までのリードタイムが長くなりがちです。さらに、実行が徹底できないような現象面も含めて、推進者として思い通りに進まないことが増えてきます。
こういった時には、だいたい4パターンに分かれるのを見てきました。
①経営陣の言いなりに進める人
②推進チームにとって最適な論理で進めて余計な責任を負わない人
③信念/情熱/胆力で乗り越える人
④心が折れる人(異動または転職)
①②に関しては、推進者は守られるかもしれませんが、目的に近づく可能性は低いでしょう。③は理想的ですが、ここで社内や社外に相談・壁打ち・時に痛みを分かち合う仲間や同志がいないと、④になって可能性もあります。
なぜ孤独を感じてしまうのか
企業における仕事が分業化している現代において、「社内の周りから理解されない」という経験は誰しもあるでしょう。一方で、社内で何かしら協力して物事を進める上では、お互いの業務理解などは必要になりますし、そういうことを契機に理解されることがありますよね。しかし、特にすでに主要な流通チャネル(店舗や卸)が存在する企業の多くでは、EC・デジタル領域を「理解しよう」としてくれる人がほぼ存在しません(経営戦略に入れ込んでいるところ、例えば店舗とECを融合した事業モデルのところは別ですが稀です)。
この記事を読んでいらっしゃる方で、当該推進担当を経験されたことがないという方は、想像してみてください。結果を出しても、こちらが繰り返し社内に説明を繰り返しても、「で、あなたのチームやメンバーって何やってるんだだっけ?」と言われる状況を。これが現実です。
他にも一部のケースですが、労働環境ということもあるかもしれません。例えば、SNS担当はアクティブに運用しようとすれば、オンオフの時間かかわらず、アカウントをチェックするようになってしまいます。現在はSNSの予約投稿ができるようになってきましたが、コメント返信も対応時間のルールなどが必要です。過去に、それが嫌で退職をするという知人もいました。
すでに主要な流通チャネル(店舗や卸)が存在する企業のEC担当部門は、会社から出されている高い目標値があったり、チームの人数が少なかったり、その割には他の事業部門からの依頼や要求が多かったりと、制限された環境でプレッシャーにさらされているケースが多いと感じます。
また、必ずしも皆がECやデジタル担当を好きでやっているとは限らないのです。志願する人の印象が強いですが、意思と関係なく指名された人もいるわけです。
EC事業をやるだけでも、孤独感・疎外感を感じたり、フラストレーションがたまります(たまらない人はよほどポジティブか、保つ秘訣があるのかもしれません)。
そして、全社を巻き込むようなオムニチャネル、OMO、DXを推進する場合は、壁が多い分、心が折れる可能性がより高まると捉えています。
事業やテクノロジーに対してどちらかを理解できる人はいたとしても、双方を理解できて相談にのれる人は業界としてもレアキャラで、そういう人に出会わなければ、孤独感を感じるのではないでしょうか。そういった環境かつ激務により、心身の疲労で体調を崩してしまったという話も聞いたことがあります。
EC・オムニチャネル担当者/部門長としての川添 隆はどうだったのか?
<画像引用>売上150%UP!「LINE」から店舗へ顧客を呼び込むプロモーション術
私の場合はベンチャー時代に心身の疲労を経験していましたが、前職のガールズアパレル企業の前半(経営改革前、1スタッフの時)は、何度か心が折れそうになったことがあります。後半に自身が責任者になってからは、事業や会社のV字回復へのコミットメントが強かったせいか、ひたすら攻めるだけでした。それでも、ECチームのマネジメントの難しさに苦悩することは多く、その都度、社長がメンターとなってくれていました。彼がいなければ、または、「理解をしよう」としなければ、私は途中で心が折れていたでしょう。
全体の事業に効きそうな取り組みによって大きな山(組織)を動かしたり、顧客課題をECで解決できた感じがするのはやりがいを感じます。しかし、それ以降も瞬間的にしんどくなる時や、ふと孤独に感じることもあります。
私には、理解しようとしてくれた経営者や、百戦錬磨で尊敬できる社外の先輩・同志の存在に恵まれました。何度も救われました。今でも、相談にのってもらったり、壁打ちをしてもらったり、同じような悩みを共有しています。
<参考>クレッジのころの取材記事:【LINE@活用術!】<後編>O2Oは店舗にひとを流すだけではない!ファンをつかむ運用の秘訣を公開|LIP SERVICEから学ぶSNS活用施策
EC・オムニチャネル担当者のメルタルケアと場づくり
流れがはやい業界に追いついていくための不安、そこに孤独感が続いてしまうと、精神的に相当きつくなってきます。ですから、EC・オムニチャネル/OMO担当者のメンタルケアが、この業界として重要になるのではないかと感じはじめました。
もし、体調まで変化を感じたら躊躇なく専門クリニックに行かれた方がよいと思います。しかし、その手前の段階での単純に相談であったり、心が折れそうな場合は、同業界の仲間や先人たちに話してみることをオススメします。
そのためにも、セミナーやイベントに行かれた場合は、積極的に交流されることをオススメします。継続的な情報収集のためだけでなく、自身の悩みを打ち明ける仲間をつくるためでもあります。
少なくとも、私はなるべく話を聞き、その人が少しでも前向きになれるような役割を担っていければと思っています。それで少しでもその人の孤独が癒され、活力になれることを願います。
かと言って、私の時間も有限なので、下記の“場”をぜひ利用してください。
◯ZOE会(基本はクローズド)
・事業会社・サプライヤーなどの立場のバランスを保ち、同じレベル感かつ多面的な議論する場
・最近はZOE会ディスカッションを“聴く場”も作っています
◯ZOE女子会
・同じフィールドで働く女性同士で交流できる場(私は単なる幹事)
・昨年はこの飲み会を運用できていないですが、随時募集中です
◯ZOE BAR
・酒のチカラを利用してゆるく交流する場(私はバーテンダーと人のつなぎに徹しています)
・不定期開催ですが、誰でも参加できます
◯川添主催のイベントやセミナー
・ZOE祭やYappliコラボイベントなど、100-200名規模で学びと交流する場
・最近はブランドを知る・買う“キッカケ”としての体験試着会もセットにしています
・誰でも参加できます
2020年以降は課題も増える分、プレッシャーも増える
アフターオリンピック、OMO推進、5G、VR、動画コンテンツ、AIなど、取り組むべきキーワードはたくさんあります。
2019年のビッグニュース、ヤフーによるZOZOの買収は、EC市場の成熟をあらわしているとも言われています(イノベーションではなく、新たな集客や人材を投入することで、売上・利益増が見込める可能性があるということ)。
とは言え、店舗や卸のように主要な流通チャネルをもつ企業におけるEC事業はまだまだ成長していくでしょう。
しかし、今後仕事をする人の方はどうでしょうか。チャネルの融合が叫ばれている中で、私は精神的な闇を抱える人が増えるのではないかと思っています。
オフラインとオンラインをつなぐ役割として、長く仕事をするコツを尋ねられたら、私は「一人にならないこと」「内に閉じこもらないこと」とアドバイスするでしょう。
孤独で魂がむしばまれることなく、誰かとつながりながら、一丸となってこの荒波と戯れたいと考えています。
そして、私はECエバンジェリストの役割として、「『ECの仕事やってるって、かっこいいね』と言われるような職業」にしていきたいと思っています(オムニチャネルやDXも含めて)。
それに近づけるためにも、癒しや同業者とつながれる“場”を、2020年以降も適宜用意していきます。どうぞよろしくお願いします。
引用・二次利用について
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ECエバンジェリスト/川添 隆(Twitter:@tkzoe)
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