ロイヤルティプログラムこそブランドの“らしさ”が見える!FABRIC TOKYOメンバーシッププログラムを解説
2022年1月26日にFABRIC TOKYOが、業界で例を見ないメンバーシッププログラム(ロイヤルティプログラム)をプレローンチしました。プレスリリースとメルマガを拝見して、利用している私(ユーザー)目線で面白いなと思い、マーケティング目線では秀逸だと感じました。
この気持ちが熱いうちにバッ~とまとめてみました。
※ちなみに、本記事は広告記事ではありません。
高まるロイヤルティプログラムの重要性と課題
B2C向けのブランド・企業において、CX(顧客体験)高めることは戦略の骨子として取り込まれてきています。その中で、自社におけるロイヤルカスタマー(優良顧客)を定義し、購買を含めたあらゆる顧客体験を通じてステップアップしてもらうためのロイヤルティプログラムは重要な位置づけだと捉えています。ロイヤルティプログラムによって、顧客側はネクストアクションを誘発され、企業側は顧客とのコミュニケーション(CRMを含む)や施策を実施していくからです。
一方で、多くの企業が抱えるロイヤルティプログラムの課題は下記があると捉えています。
実際にロイヤルティプログラムを考える側の視点としては、1度決めたものを更新しづらい背景があり、CRM・集客・販促施策に業務を追われ、なかなか見直すタイミングがないのでしょう。
※EC担当者のころの私もこんな感じでした。
一方で、ロイヤルティプログラムのネタは一見地味ですが、条件設定と提供サービスを見ると、ブランド側の顧客への向き合い方・考え方、ブランド“らしさ”(ユニークさ)が見えてきます。
過去事例では、ナノ・ユニバースメンバーズのリニューアルには“らしさ”・ユニークさを感じる要素が多くありました。その時の簡単な考察を下記に記載しています。
では、FABRIC TOKYOの“らしさ”・ユニークさとはどんなところでしょうか。
FABRIC TOKYOメンバーシッププログラムの“らしさ”とは?
これまでのファッションブランドのロイヤルティプログラムは画一的なものが多かったです。ランクアップ条件は一定期間内の購入金額、提供サービスはポイント付与率の変倍が一般的で一部のブランドは専用ノベルティをプレセントといった感じです。
今回のFABRIC TOKYOメンバーシッププログラム(ロイヤルティプログラム)は、B2C関連の業界やファッション業界では見たことがないものだと捉えています。
“らしさ”・ユニークさを感じたのは下記の項目です。
総合的に見てこういった条件や提供サービスはあまり見たことがありません。継続条件なんかは、化粧品ECのロイヤルティプログラムで見かけたことがあります。
先に予想しておくと、これらを模倣するところも出てくるでしょう。ただし、表面的に模倣しても意味がありません。
「なぜこのような条件・サービスを設定したのか?」を考えてみると、自社でもいかせる考え方あるでしょう。
FABRIC TOKYOの狙いとは?
FABRIC TOKYO代表取締役の森雄一郎さんは、NewsPicksとTwitterで下記のようなコメントを挙げられています。
これらのコメントから、市場(外部環境)の変化、ブランドのコンセプト、クエストというゲーム性などが盛り込まれると読み取れます。
【ヒント】条件と提供サービスの考察・解説
ここからは、FABRIC TOKYOメンバーシッププログラムにおいて、“らしさ”・ユニークさを感じた項目(全項目ではなく抜粋)について、勝手に考察をします。
あくまでも、このプログラムの意図を直接ヒアリングしたわけではありません。ただし、コマースプロデューサーの知見と、FABRIC TOKYOの中の人と対談してきた情報、FABRIC TOKYOの過去の取り組み情報をもとにしているので、そこそこ大きなズレはないと思います。
ステージアップ条件の狙い
■ LINEアカウントを連携
・CRMによるリピート率向上、LTV向上が狙いと考えられる(KPIはリピート率、LTV)
・LINEログイン(会員情報とLINE連携)を促進することで継続率の向上が狙える。
※LINEログインの定量的効果に関する参考記事↓
・スマホアプリを持たないFABRIC TOKYOにとっては、LINE公式アカウントを“ブランドの入り口”に位置付けているので登録してもらいたい。ユーザーとしても「チャットで相談」のような、アクティブに相談が可能なので便利。
■ オーダーメイド商品を購入する
・CX向上によるLTV向上が狙いと考えられる(KPIはNPS、LTV)。
・FABRIC TOKYOでは主力のオーダーメイド商品と既製品が販売されているのが前提。
・ブランドの強みを体験してもらえるオーダーメイドを推奨したい(恐らく顧客体験向上にもつながる)。
■ 商品着用後アンケートに回答
・カスタマーサクセスによるLTV向上が狙いと考えられる(KPIはNPS、LTV)。
・単独チームを構えるほど“カスタマーサクセス(顧客の成功)”を追求している前提。
・着用後のアンケートによって個々のユーザーのカスタマーサクセスにつなげるコミュニケーションが可能になる。
・顧客の声(VOC)が高頻度で集まると今後の商品やサービス展開を改善できる。
■ 複数カテゴリーのアイテムをオーダーする
・1人あたりの買い回りによるLTV向上が狙いと考えられる(KPIは購入頻度、LTV)。
・私の知見として、複数カテゴリを購入したユーザーはリピート率やLTVが高い定量結果がある。すなわち、FABRIC TOKYOも同様では?というのが前提。
・複数アイテムの接点を作りたい。
■ ECからオーダーする
・店舗とオンライン併用を高めることでのリピート率、LTV向上が狙いと考えられる(KPIは併用率、LTV)。
・FABRIC TOKYOは店舗に来店してもオンラインで注文することが前提。ここで「ECからオーダーする」と明示されているのを考えると、店舗→注文とEC→注文は区別されているはず。
・意思決定の難易度が高いECでのオーダーを促進したい。
ステージ継続条件の狙い
■ カラダIDを更新する
・パーソナライズCRMによるCX向上、LTV向上が狙いだと考えられる(KPIはリーダーステージのCMR経由の購入、リピート率、LTV)
・カラダIDとは、個々のユーザーのビジネスウェアについての情報というのが前提。
・ライフスタイルと身体によりフィットする商品の提案とサポートが可能。すなわち、登録してもらうことで、パーソナルなCRMを促進したい。
■ 年間500EXPを獲得する
・ブランド接点を増やすことで、購入以外のアクティブ率向上とLTV向上が狙いだと考えられる(KPIはリーダーステージのアクティブ率(来訪回数やロログインの頻度など)、リピート率、LTV)
・EXPの詳細説明は今のところ見当たらないのが前提。ただし、プレスリリースには「FABRIC TOKYOのファンコンテンツへのアクセスや参加等、顧客のアクションベースでステージがアップしていくことが特長です」と記載があるので、恐らくは閲覧・参加・来店などの“行動”がEXPに反映されると予想される。
・購入以外の”ブランド活動への参加”を促進したい。
※他社事例として、良品計画は“応援”という概念をお持ちです↓
提供サービスの狙い
■ サポート料金優待(2022年3月~)
・CX向上・カスタマーサクセスによるLTV向上が狙いと考えられる(KPIはNPS、LTV)。
・FABRIC TOKYOではサブスク型や単発型で、いくつかのサポートが設定されている前提。
・お直しなどを含めて購入されたアイテムを長く着てもらうことを促進したい。
■ 提携サービス優待(2022年3月~)
・CX向上・カスタマーサクセスによるLTV向上が狙いと考えられる(KPIはNPS、LTV)。
・提携サービスの詳細説明は今のところ見当たらない、かつ過去のプレスリリースを見ても外部サービスての提携は見当たらないのが前提(短期的な提携はあるかも?)。なんとなく、相性が良いのはクリーニングや保管サービスなどとの連携だと予想される。
・提携サービス利用によって購入されたアイテムを長く着てもらうことを促進したい。
■ パーソナルコーディネートサービス(2022年6月~)
・CX向上・カスタマーサクセスによるLTV向上が狙いと考えられる(KPIはNPS、LTV)。
・パーソナルコーディネートサービスの詳細説明は今のところ見当たらない。恐らく社内スタッフorスタイリストによる直接的なアドバイス、もしくはテクノロジーによるアドバイスだと予想される。
・顧客のペインになりやすい「手持ちの服を含めて上手にコーディネートできない」を解消したい。
■ ファンコミュニティ招待(2022年6月~)
・CX向上・カスタマーサクセスによるLTV向上が狙いと考えられる(KPIはNPS、LTV)。
・ファンコミュニティの詳細説明は今のところ見当たらない。過去にサブブランドSTAMP β(現在は統合)の方では、クリエイターとのイベントやClubhouseでのファンイベントなどが行われていました。恐らく今回のファンコミュニティはオンラインをベースとして、適宜オフラインでもイベントなどがありそうだと予想される。
・ユーザー同士の交流を図ることで、ブランドと顧客との間の関係性とより強くしたい。
今回のメンバーシッププログラムも含めて、FABRIC TOKYOはいつも様々な取り組みで、ファッション業界に革新性を吹き込んでくれますね。今後、こういったブランドが増えてくることを期待しております。
終
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コマースプロデューサー / Eコマース先生
川添 隆(Twitter:@tkzoe)
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