“オンライン接客”には不思議な没入感があるーIKEUCHI ORGANICのZoom接客
ECエバンジェリストの川添 隆です。#Withコロナ時代を生き抜くヒント を探っていく連載をしています。
非常事態宣言解除されたものの、第2波の可能性が懸念されています。現時点の小売業界として重要なのは、安心してお買い物できる店舗環境を整えながら、第2波が来るものと思って準備しておくことも必要な局面だと捉えています。その上でもオンラインの接点は重要です。
一方で「『触れてみないとわからない』というような商品をオンラインのみで伝えるのは難しいのでは?」という懸念があります。そこに挑戦しているのが、タオルブランドのIKEUCHI ORGANIC(イケウチオーガニック)です。
連載第6部は、5月下旬にユーザーとして体験したIKEUCHI ORGANICのZoom接客からの学びと、具体的な接客の流れを共有いたします。
※本記事は中の方からも事前に許可をいただいております。
IKEUCHI ORGANICの場合は、誰でも使えるツールを駆使して実施されています。「Zoom接客をうちの店でもやってみたい!だけど、どうやって準備すればよいの?」という方に参考になるはずです。
Zoom接客の申し込みの流れ
IKEUCHI ORGANICではZoom接客を「オンラインzoomストア」と位置付けられ、4月下旬より開催されています。私自身は上記の記事で初めてIKEUCHI ORGANICを知り、Zoom接客を受けてみることにしました。
申込みの流れは下記のような手順です。
1.オンラインZoomストアの開催日時を確認する
2.メールまたは電話で希望日時を連絡
3.zoom URLと下記の質問が記載された返信メールを受け取る(5月下旬時点の内容)
1)お電話番号
2)すでにIKEUCHI ORGANICのタオルをお持ちですか?
3)今回お探しの商品
4.入力してメールを返信
ユーザー側がやることはここまでです。オールユアーズの事例にも記載しましたが、「事前にヒアリング」をテキスト情報で頂くことがポイントです。
Zoomストアにおける当日の接客
実際に初めてZoom接客を受けるのは緊張感があります。今後私自身も参考にするために、一般の方が多く使われるであろうスマートフォンで接客を受けることにしました。
接客の流れは下記のような手順です。
1.Zoom URLに接続
〇 参加スタッフ:タオルソムリエ・京都店 店長の益田 晴子さん(@京都)、アシスタント 池内 計司さん(@愛媛)
〇 池内さんは代表の方です(汗)
〇 京都店では、固定設置用のPCと店内移動用のスマホの計2アカウント
2.事前に回答したアンケート「お探しの商品」の内容を基に、「どんな用途・サイズのタオルを探しているか?どんな肌触りが好みかの?」をヒアリング
〇 私の回答↓
今回お探しの商品:最終的にはタオルケットを検討しているのですが、その前にIKEUCI ORGANICの肌触りを確かめられるものを探しています。
好みの肌触り:柔らかいほうが良い
3.商品ラインナップをマトリックスにしてあるスライドを見せてもらって、全体感と対象となる複数の商品を事前に説明
4.店内に陳列されている商品を見せてもらいながら具体的な商品説明を受ける
〇 店内を見せるのはスマホで、具体的に気になる商品が決まったら、固定設置のPCの前で説明をしてもらえました。
〇 生地の柔らかいか、ホテルのタオルのようにしっかりしているかの説明の工夫があり、比較して説明されることで理解が深まりました。
・高さを比べる
・指で押した凹みを見せる
・手の上で跳ねさせる
5.一通り説明を受けてから、さらに見たい商品を説明してもらう
6.クロージング
〇 買わなくてもOKというのが前提。私は引き込まれて買いました。
〇 ECに掲載していない商品の場合は、銀行振り込みか代引き。ECに在庫がある場合は、後で自分自身(お客様側)がECでの決済。
7.「何か聞きたいことはないか?」を確認される
〇 私は池内代表に、「なぜコストをかけてまでサステナブルな商品をつくるのか?」をお聞きして、快く回答いただきました。
結果的に50分ほど接客していただき、Zoomストアで購入に至りました。マトリックスを見せていただくあたりまでは私自身も身構えている感覚があったのですが、商品を見せていただきながら好みを引き出していただくうちに、完全に没入していきました。この没入感はオフラインの店舗だと感じたことのない感覚でした。
Zoom接客において重要なこととは?
もし、事業者側としてZoom接客をやる場合は下記を留意すると良いでしょう。
〇 自社商品を選ぶ上で尋ねる事は、アンケートとして事前に要望を確認しておく
これにより、接客のスタートがスムーズになります。ただし、今回の私もそうですが、商品が明確に決まっておらずニュアンスだけしか決まっていないお客様もいるはずです。接客の冒頭で質問責めしすぎると「追い詰められた感」が出るはずなので、そういう場合は商品を見せながら引き出す方がよいでしょう。
〇 1にも2にも、スタッフ側のネットワーク環境は整えておく
今回は、冒頭あたりで京都店からの声が最初は聞き取りにくいことがありました。Zoomの場合は、親密な関係でないと、聞き返すことを躊躇する人が多いのではないかと捉えています。せっかくの接客体験を損ねてしまう可能性があるので、スタッフ側が「音声は問題ないですか?」をステップごとに確認をいれた方が良さそうです。
ちなみにZoomの場合、音声の乱れが続くようであれば、ビデオをOFFにしてみると良いです。
〇 ライティングを整えておく
接客するスタッフの顔が暗いと印象が悪くなってしまう可能性があります。店内のスポットライトやスタンド型の女優ライトなどを用意しておくとよいでしょう。
これはB2Bのオンライン商談ではテッパンになっています。
〇 希望商品を持ってくるやり方、店内を案内しながら商品を見せるやり方どちらも有効
これは商材によるかもしれません。今回のタオルの場合は、陳列してある商品の高さを比較することも商品理解につながりました。
こういう場合は店内を案内するのもよいでしょう。また店の雰囲気を伝える上でも有効です。明確に商品が決まっている場合は、希望の商品を持ってきて説明された方が、お客様側は集中できるかもしれません。
また、資料やEC、SNSなどの画面共有ができるのがZoomのメリットです。これはオフラインの店舗だとやりづらいですが、使用体験をイメージしてもらうには、画面共有を使って伝えるとよいでしょう。
〇 売ろうとするより、要望を訊いて伝えることが重要
独りでオンラインの情報を収集して意思決定をできる人は、そもそもオンライン接客は不要です。すなわち、オンライン接客を使う人は「相談を聞いて欲しい、わからないことを聞きたい、購入を迷っているから背中を押して欲しい」から接客を望むわけです。お客様が話したいことを受け止めたり引き出す、または背中を押して欲しそうなお客様には納得いく商品をオススメするなど、反応の見極めが必要でしょう。
◯よどみなくブランドのこだわりを伝えられる人、その場で全てを伝えられる人が登場すると心を掴まれる
今回はどんな球を投げても、池内代表と益田店長が返してくださったので、とても信頼感がありました。例えば電話の場合「折り返し」などがありますが、受ける側としては折り返しは面倒さを感じるはずです(私は面倒です)。その場で完結できる人を、Zoom接客のスタッフにすることで、ブランド体験は高まると思われます。
結果的に、濃い体験が次のお客様を生む
上記の記事にもあるように、お客様が知りたいことの解決が客単価を高め、その熱量の高い体験をSNSに投稿されることでUGCが生まれ、それを見た次のお客様を呼ぶというサイクルができているようです。
とは言うものの「予約が多くて受けられなかったらどうしよう?」「当日ちゃんと対応できるか?」などの漠然とした不確実性で歩みが止まっている事業者の方もいらっしゃるかもしれません。前者に関しては、告知しなければ予約はゼロです。逆に言えば、告知量で受けられる量を調整することが、確実にできることです。また後者は、本記事に記載した事前アンケートで解消できるはずです。まずはお客様が解決したいことから話しを進めていけば、他の話しにもつながるでしょう。
小売として忘れていけないのは、「必ずしも全てのお客様が、自分自身のニーズや欲しいモノを正しく理解しているわけではない」ということだと感じています。店舗での小売をやられている方だとおわかりだと思いますが、「そのご要望ならこちらの商品がよい」「もしかしたら、こういったことを解決されたいのでは?」となることがあるはずです。
例えば、IKEUCHI ORGANICのZoomストアにおいて、「柔らかいタオルが欲しい」と思っていたのですが、「柔らかいだけでなく、洗濯を繰り返しても風合いを保てる安定性」を求めていることを引き出され、私自身が理解することができました。これは“接客”を通じて引き出されることだと考えています。
このようなお客様を、オンラインを通じて接客してみることで、ブランドや小売店として新たな発見があると信じております。
ブランド情報
IKEUCHI ORGANIC(イケウチオーガニック)
ブランドサイト(オンラインストア) : https://www.ikeuchi.org/
note : https://note.com/ikeuchiorganic
#Withコロナ時代を生き抜くヒント 連載のご紹介↓
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