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アパレル業界はMD・デジタル戦略・資産効率の“再定義”が必要な理由【2017年10月公開記事】

実店舗メインの小売企業の中で、組織・チーム・ユーザーのバランスをとる”組織Eコマース”を泥臭く改革をしてきた川添 隆(Twitter等のSNS一覧)です。

旧ブログからのお引越し記事として転載しております。また、2023年時点での見立てを追記しました。
※オリジナル公開日:2017年10月16日

濃厚な議論はイベントやセミナーだけでなくSNSなどでもふと見かけますよね。知見を持った人たちが気づけば、土曜日の朝8時からFacebookのコメントでも行われるわけです。

2017年10月14日のFacebookでの濃厚な議論が、他の方へのお役に立てばと思い、コメンテーターの皆さまの同意のもとコチラで記事にいたしました。

アパレル業界はMD・デジタル戦略・資産効率の“再定義”が必要

主なコメンテーター ※2017年10月当時
・(株)ビービーエフ 安住 祐一さん
・(株)オーティーエス 小橋 重信さん
・(株)エイ・ネット 都築 広幸さん
・(株)コメ兵 藤原 義昭さん
・(株)パルコ 林 直孝さん
・(株)メガネスーパー 川添 隆
※皆さま、個人の見解として述べられています(以下、敬称省略)

私が7時20分に「苦戦続くナノ・ユニバースとローズバッドの再建策│WWD JAPAN」に対して、EC・デジタル戦略の見解を投稿し、OTS小橋さんがコメントをしたところから議論がスタートします。

“ECやデジタルを理解していない経営者”がECやオムニチャネルに口出しをするもロクなことはないです。ナノ・ユニバースは日本のアパレル×デジタル領域の宝。TSIグループのデジタル戦略も、ナノ・ユニバースに合わせた方がスムーズにいくのでは?と思います。

Posted by Takashi Kawazoe on Friday, October 13, 2017


ディスカッション1:チャネル別のMDの必要性

ZOZOTOWN 2017年10月当時

(小橋):安住さん、川添さんにひとつ聞いていいですか? この記事だと、チャネル別にZOZOTOWNにはZOZOTOWN用、アウトレットにはアウトレット用に戦略的に商品を作り、粗利改善みたいな事が書かれていますが、どう思われますか?
個人的にはチャネル別って? 売上至上主義的な…感じもして…ブランディングに疑問を感じます。チャネルによって顧客が違うからいいのですかね?

(川添):客層が異なるので、短期的な手法としてはありだと思います。が、それって何がゴールなんだっけってことですよね。
例えば、究極の話、ECの場合は、究極の話、少品番で1品番を多く売るのに適していますし、その方が効率がよい。ただし、店舗との在庫を共有すると、在庫量は40%になるから、限定をつくって100%つむのはやりやすいです。
一方、顧客は限定=希少性をとると逆行します。
ブランドの格をあげていくには、長い目で見ると限定品は極力少なくした方がよいと思います。

(安住):ZOZOTOWNを売上面として、もしくはZOZOTOWN内検索時に存在しているか否か(認知・広告)を考えると出店する戦略が一つにはあると思います。ZOZOTOWNはランキング上位にくる商品の平均単価が下がった為、通常品番では対抗しにくいので専用品番を作る
アウトレットも同じく、SKU欠けを補う為や、アウトレットの顧客層を対象に、プロパー時の売れ筋コピー品番を配置して、その他の在庫消化を進める戦略はあると思います。(2Buy施策とかやる理由ですが)
ブランド毀損や、どこまで売上に拘るのかを熟慮する必要はありますよね。
経営層が、KPIとして常に売上が右肩上がりであることを求めるから、そうなっていくんですよね。
そこは越智さんとかが進める「顧客をデジタルでどうワクワクさせるか、その中でカッコいい商品にどう出会ってもらうか」、という思想とは相反していることもあるだろうし、川添さんの仰るように「想いもってる奴に任せろよ(そこまで書いてませんがwww)」ということなのかと思います。

(川添):「想いを持ってるやつに任せろよ」とは言っていませんが、「“思想をもつ事業家”に任せて、“飼い犬”は黙っとれ」という優しい言い回しにしておきます(^^)

(安住):川添さん、wwwwwまだ朝ですから(笑)


ディスカッション2:ブランドポジションによるデジタル戦略の違い

(都築):川添さん、安住さん、おはようございます。
かたや百貨店で戦ってきた業態、かたやSC。この違いは大きいように思います。
百貨店→自前で取り組み始めています。ただし、テナントのそれは調整が必要。
SCは特にしばらないなか、パルコのようにテナント巻き込んでやってしまうところもあるので。
いずれにせよ、消費者目線では全くない点ですね。。。

(川添):都築さん、ありがとうございます。その観点はありますよね。
また、ローズバッドはもともとバイイング(セレクト)の品番数が多いので、ECで対応しづらかった背景もありますね。
デジタルは瞬発性はあるものの、やはり結果の積み上げだと思うので、常に2~3年後を見据えて、今何をやるか?の選択と実行が大事ですね。

(安住):都築さん、この記事には、いくつかの示唆もあると思っていて・・・巨大化したホールディングス体制の中で画一的に進めようとすると、個々の個性的なブランドがどうなっていくのか問題もあるのかなぁ、と思います。

(川添):安住さんのおっしゃるように、画一的な施策はハレーションを起こします。オムニセブンもそうですよね。
本来は、ブランドの規模や生産背景、顧客との関係性によって、ECやデジタルの戦術は変わってきます。だから、中の人は大変なんですが、そこまでやらんといかんです。

(都築):川添さん、そうですそうです。
それと、『誰のお客様なのか』という議論もあります。そこの価値観にまだまだ大きな違いがあって、それも進まない要因なのかなと思っています。
ZOZOTOWNに関しては、収益性に重きをおいたモノ作りからのブランディング論でしたが、お客さんは『どこで』もしくは『誰から』買ってる認識なのか、みたいなことが(主語が違いますが)通ずるかと思います。

(都築):安住さん、そうですね。
実店舗で百貨店育ちと路面生まれ(からのSC育ち)は気質違って当然で、収益とは違うところで、少し気になりコメントさせていただきました(汗)


ディスカッション3:資産効率(家賃・人件費)の健全化

(藤原):僕の仮説は全国のSCやテナントの売り場面積は増え続けているけど、一部除いてアパレルは軒並み売上右肩下がりです。で、SCが増えてるんで、有名ショップは出店してゆきます。日本では従業員の首切りなかなかできないので、結局店をリストラしないと商品が必要なので仕入れる、作るをさらに多くしないといけないです。
で家計に占める衣料品購入額(エンゲル係数みたいなもの)は下がり続けている。要は消費者は買ってない。
このギャップがどんどん広がって来て、安く売らないといけないというのが現在のアパレル不況なのじゃないかな?と僕思ってます。TSIは去年確か260店舗ぐらい閉めてるので未だ良いと思いますが、早くBSの左側小さくして資産効率高める企業にならないとどんどん追い込まれると思います。
粗利率の低下は短期的な問題で(もちろん大きいですけど)1番大きいのは資産効率(家賃と人件費)の問題だと思いますー

(安住): 藤原さん、仰る通りですね。
そこ解消するには、いくつかの方法があると思っているのですが、ナノ・ユニバースのように意思を持ってEC化率を上げたブランドにはいくらでも活路がある。前職もEC化率50%超だったのですが、オフライン・オンラインを含めたMD・リソースのコントロールを根本的にやらないブランドは生き残れないでしょうね^^

(川添):藤原 義昭 さん、いつもながら的を得たコメントありがとうございます!
アパレルはまだテナント出店が多いんで、全体のPLで見たときに、家賃・人件費によるダメージはぼやけているかもしれないなと
メガネスーパーは、ほぼ全てが路面店で、損益分岐が明確にあっただけに、市場全体の単価下落と新たな競合の登場で8年間の赤字をさまよいました。
再生期には、実はドラスティックな不採算店舗の閉店と、チャンスがある立地への小型出店を並行してやっていました。
商品の観点だけではなく、この部分は本当に肝だと思います。

(藤原):ウチも前年店舗リストラで立て直ししたので凄く共感!
後一次流通さんがめちゃ値下げすると、ウチも売価困るので二次流通から変えて行きますよ!

(川添):メディアは“閉店”をすごくネガティブに捉えてる風潮も良くないですが、実際は“攻めるための閉店”はあると思います。一番よくないのは、PLや効率観点ではなく、目立たない店舗をコッソリ閉店すること(今、メガネ競合で多いんですが)。
そして、一次流通の価格の不安定は、二次流通に影響しますよね。ズバズバ変えていってください!

(林):朝から熱い議論!SC側の視点ですが、店頭に行かないとネットで見て欲しくなった商品在庫があるかないかわからなかったり、店頭で欲しい商品が見つかったがサイズ、色がなくて取り寄せ(再来店)しなくてはいけない、といった課題を解決するために、SC側もオムニチャネル化の仕組み作りが必要で、売場、人の資産の効率を上げて頂く事に繋がって行くと思ってます。

(川添):朝から生議論すw
“家賃”や“店舗の減価償却”っ既成概念を一回壊す必要もありそうです。家賃はかかって当たり前と取られる経費ではなく、全てはプラスにするための投資であると

(安住):こういう議論を「土曜日の朝8時」から真剣に討論しあえる皆様と知り合えて本当に幸せだなぁ、と思います(^^)(^^)

(林):私のコメント、安住さんスタートの皆さんの議論の、特に藤原さんのSC増→ショップ増→商品在庫増の先に資産効率の課題があるという流れは、そのままSCの課題という文脈です。


当時の振り返り

(小橋):凄い!勉強になりました^_^
ブランドの背景の違いや、短期視点でのチャネルやデジタルを活かした戦術の部分、長期視点での市場規模を踏まえた上でのBSでの資産効果の問題…攻めの退店や、二次利流通の活かし方など、お金払ってでも聞かないとですね…ありがとうございました^_^


ということで、土曜日の朝8時からの白熱議論を共有させていただきました。

ぜひ、この議論の続きをどこかでできたらと思います。業務連絡ですが、これを見たメディアの皆さま、マーケティングイベント企業の皆さまは、どこかでセッティングをお願いします!早い者勝ちですよ(笑)。


2023年現在、ディスカッションを見て思うこと

5年半前の議論ですが、いまだに同様の議論がイベントであったり、はたまた企業内で話されている場面に遭遇します。もちろん、こういった観点を取り入れて事業の進化を続けている小売企業はあるものの、私の見立てでは本質的に実践できているのはまだ少数だと捉えています。

そう考えると”問いの質”は大事ですが、”問いの重要度”や”緊急度は低いけど重要な課題に着手する”といった企業姿勢が問われていると感じました。


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