購買+行動起点のロイヤルティプログラムは過渡期!ビームス、シップス、ユナイテッドアローズの違いは?
2024年9月11日より、ビームスが提供するロイヤルティプログラムが刷新しました。これにより、デジタル推進の感度が高いアパレル企業による「購買起点+行動起点でのインセンティブ設計」のパターンが出揃ってきたと捉えています。
【+行動起点】のロイヤルティプログラムの流れ
日本の小売における【+行動起点】のロイヤルティプログラムに関しては、無印良品が「レビューを書くとマイル付与」をいち早く取り入れた印象がありますが、その施策自体が他企業へ波及してはいないでしょう。その後、2022年1月26日にFABRIC TOKYOがロイヤルティプログラムを刷新し、この情報を見た時に、個人的には【+行動起点】の流れが来るのでは?と予感しておりました。
そして、2023年8月にユナイテッドアローズが、【+行動起点】のロイヤルティプログラムへ刷新したことで、中堅・大手にも広がっていくだろうと考えておりました。
先行してロイヤルティプログラムを刷新したユナイテッドアローズ、シップス、ビームスの違いを見てみましょう。
なぜポイントプログラムの見直しが行われているのか?
私見ですが、ポイントプログラムの見直しが行われているのは下記の3つの理由からだと考えています。
・独自ポイントによる販促が売上・利益増に寄与しなくなってきている&ポイント付与がロイヤルティ構築に寄与していない
・ポイントの会計処理が変更になった(主に上場企業が対象)
・OMOやユニファイドコマース時代のCRMを行うには顧客の能動的かつ好意を示すデータ(シグナル)の取得が必要になっている
※お気に入り起点CRMの次のフェーズ
ユナイテッドアローズ、シップス、ビームスの3社の違い
下記に3社の主要な項目を記載しています。注目すべきは「付与するインセンティブ、付与基準、会員ステージの変更タイミング・判定基準」の違いです。特定やステージの区切り方、対象となる行動内容、詳細は各社のサイトを見ていただきたいです。
ユナイテッドアローズ(UA Club)
・リニューアル: 2023年8月1日
・付与するインセンティブ:マイル(クーポンに交換が必要
例:50,000マイルを1,000円引きクーポンに交換)
・付与基準:購買と行動でマイルを付与
・会員ステージの変更タイミング:年1回 ※ただし、ほかのステージの条件を満たした場合は、翌日にステージが更新
・会員ステージの判定基準:期間内の累計獲得マイル数
・マイル有効期限: 最新マイル獲得・利用日より1年間
https://store.united-arrows.co.jp/guide/members/
シップス(SHIPS Member’s Club)
・リニューアル: 2024年4月1日
・付与するインセンティブ:ポイント(1ポイント=1円で使える)
・付与基準:購買と行動でポイントを付与
・会員ステージの変更タイミング:年1回 ※ただし期間内に次ステージ条件に達した場合は翌日にステージが更新
・会員ステージの判定基準:期間内の累計購入金額
・ポイント有効期限:最終お買上日より1年間
ビームス(BEAMS CLUB)
・リニューアル: 2024年9月11日
・付与するインセンティブ:ポイント(1ポイント=1円で使える)、ステージ判定用のマイル
・付与基準:購買でポイントとマイルを付与、行動でマイル付与
・会員ステージの変更タイミング:月1回
・会員ステージの判定基準: 毎年3月1日から翌年2月末日まで累積獲得マイル数
・ポイント有効期限:最終購買月より1年間
・マイルの有効期限: 購入付与のマイルは毎年3月1日から翌年2月末日まで、行動付与のマイルはリセット無し(貯まり続ける)
https://www.beams.co.jp/pages/clubguide.aspx
ビームスの行動付与のマイルは消えずに貯まり続けるというのは非常に斬新です!ユーザーとしては「このブランドは好きな方だけど、今シーズンは買うものない」という時もあるので、それでも応援できる仕組みになっていてユニークだと感じました。
この3社ではシップスは行動でもポイント付与があるので、ユーザーの立場でみるとかなりお得です。また、ユナイテッドアローズ、ビームスはスタッフなどのお気に入り登録やメルマガ登録・LINE連携での付与があり、CRM施策をグリップしたい狙いがうかがえます。
また今回取り上げていませんが、アダストリアの.stのロイヤルティプログラムもポイントとスコアの両軸になっています(スコアは年1回リセット)。
ロイヤルティプログラムの見直しは過渡期
リニューアルから約1年を迎えたユナイテッドアローズは、2024年7月18日に「UAクラブ会員特典 一部内容改定のお知らせ」を発表しています。
https://store.united-arrows.co.jp/information/2024/07/202407-685856.html
やはりロイヤルティプログラムは一定期間運用してみないとバグ出しや費用対効果検証ができない特性を持っているため、各社ともに今後ブラッシュアップされていくでしょう。
また、企業やマーケターの狙いをユーザーがそのまま受け入れるわけではありません。ユーザー自身のメリット・手軽さ、ユーザーへのわかりやすさ(認知→認識)あたりを整える必要があるでしょう。
ユーザーに受け入れてもらい、企業にも効果のある仕組みを作り上げるには時間がかかると思われますが、今後もロイヤルティプログラム刷新が増えてくるはずなのでぜひ注目してみてください。そして、自社の刷新のヒントにするときは、各社の“狙い”や“どんなユーザー像なのか?”を読み解いてみるとよいでしょう。
終
川添 隆( @tkzoe )
▼自著:「実店舗+EC」戦略、成功の法則
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