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喫茶ランドリーは継続的にアップデートする“私設公民館”!?【2018年2月公開記事】

オンライン・オフラインをつなぐコマースプロデューサーかつECビジネス周りを伝える・応援するEコマース先生の川添 隆(Twitter等のSNS一覧)です。

旧ブログからのお引越し記事として転載しております。
※オリジナル公開日:2018年2月8日

建築や都市計画の業界だけでなく、小売り業界のデジタル推進担当者の界隈でも話題になっているのが森下駅と両国駅の間にある「喫茶ランドリー」です。

もし、知らない方は、まず下記の記事を見てください!

さて、私自身は先週末(2018年1月末)に知ったばかりですし、この喫茶ランドリー自体も2018年1月5日にグランドオープンして1カ月ほどしかたっていません。それなのに、この話題ということは「行ってみるしかない!」ということで、早速行ってきました。

※いつもは「お客様」という言葉を使っているのですが、今回は「お客さん」と記載します。そっちの方がしっくりくるので。


衝撃!記事に書いてあることが目の前で起きている

ロンバケ世代には馴染み深い森下駅。新大橋付近は、ロンバケのロケ地で、あの「セナマン」があった地です。

さて森下駅から、Googleマップを片手に向かって行くものの人気(ひとけ)がありません。小さなオフィスがあるものの、マンション多めの住宅地域なだけに頷ける状況。

いよいよ「喫茶ランドリー」がある通りに来てもこんな感じ。この通りを見て、「さすがに今日はお客さん入ってないか」と思いながら近づき、、、

お店が見えたころ、喫茶スペースのお客さんが2人見えたので、「ほぉ~」と思った矢先。。。

奥のランドリー部屋(通称:家事室)で、4人の幼児が仲良くアニメを観ているわけです。店内に入ると、カウンターのそばではママさん2人が何やら作戦会議中。早速、記事に書いてある出来事を目の当たりにして驚きました。

そして、コーヒーを飲みながら、しばらく仕事をしながら様子見たり、聞こえてくる話から、記事に書いてある下記のようなことがわかりました。

・お店の中にいるママ友の姿を見て、「おー、〇〇さん」と言いながらお客さんが入ってくる。1人ではなく、時間をおいて合計2〜3人くらいは入ってきた。

・カフェというよりは「ただの街の居場所」。幼稚園ママが毎日来ているし、この場所で人伝いで話すと「え~!住んでるところ近いじゃん」ってつながりができる。

・私のようにWEBの記事を見て、視察に来るお客さんも喫茶スペースに入ってくる。土日は満席になるくらい。

記事通りの「ミシンウィーク」
ランドリーはカウンターで支払い・ミシン安い!

喫茶ランドリーを運営されているGroundLevel 大西さんの記事を改めてみてみると、立ち上げから運営までやって、お客さんのインサイトを深堀しているんだなと感じます。特に前者の2つは自然発生しているんですよね。

でも、自分が学生時代に学校にいたときって、「学校という社会にいるけど、クラスという組織に分断されて、その中で横断的な集まり(コミュニティ)が勝手にできる。廊下を歩いているやつを呼び止めて、会話に入れる。」みたいな感じに近いなと思います。


記事に書いてなかった発見はコミュニティの本質

実際にその場にいて、スタッフや常連ママさんとお話ししていると、記事には明記されていなかった驚くべきポイントが2つ見えてきました。

(1)お客さんがスタッフ化している
・今、常駐スタッフの方は元々お客さん側だった。
・毎日来ている常連ママさんが既にスタッフ化している。他のお客さんに「喫茶ランドリー」の設立背景、コンセプト、使い方を説明している。

(2)一刻一刻と進化する自由な仕組み

・たまたま来たお客さんを巻き込んでいく。例えば、今日来たプリザーブドフラワーができる人や、周辺で革小物のお店をやろうとしている人に「ここでワークショップやってくださいよ」とその場で巻き込む。

・話しの中から新しい企画が生まれている。例えば、今販売している弁当もノリでスタート。今後は、おもちゃ交換会、夜営業のDJイベントもやりたいし、色々やりたいことがある。

・お客さんが勝手にDIYをしている(衝撃中の衝撃)。それによって、より喫茶ランドリーを使いやすくしている。

上記の(1)(2)は独立しているポイントではなく、(2)は「お客さんがスタッフ化」しているから成立するんだと思います。こういう自主性で回っていくのは、この場所を「喫茶とランドリーのための場」ではなく「地域の人たちが集まって、自由に使える場」にしたいという方針による”自由”があるではないでしょうか。


ここは「私設公民館」なんです

常連ママさんと実際にお話しした中で、印象に残ったコメントがあります。

東京って基本的に家が狭い。ミシン使いたくても、そんなに使わなそうなら買えない。かといって、ミシン持っている人に家に数人で行くわけにはいかない。
一方で、公民館使おうとすると利用料で金がかかるし、子どもを連れてうるさくはできない。気兼ねなく集まる場所ってなかった。ココは「私設公民館」なんですよ。

これを「運営者=仕掛け人」側の目線として、GroundLevel 大西さんは、記事の中で以下のように言及されています。

場をつくるとか、コミュニティとか、そんな言葉に踊らされる時代はもう終わりにしなくてはいけません。いかに多くのアノニマスな市民を引き寄せ、自然と会話をしはじめる。その上で、それぞれが自由に存在できる。ささいなやる気が簡単に実現できる場がある。そういう場でまちが溢れている。それが、これからの21世紀に求められる本当のまちづくりだとわたしたちは考えています。それこそが「健康」や「幸せ」につながり、経済がより活性化していくのです。

https://note.com/masakimosaki/n/n7ff69f4a3067

場所や空間には何かしらの役割があります。が、役割の定義が決まりすぎると、そこにいる人は過ごし方を定義され、自由に存在しづらくなるはずです。場のつくり方や、コミュニティの作り方があるわけではなく、そこにいる人によって自然と形作られていく空間って豊かなものになるし、それが「幸せ」につながっていくのかもしれません。


”全体最適”と対極にあるもの

みんなの「○○したい」が叶う空間

喫茶ランドリーに行き、小売業界のECやオムニチャネルなどのデジタルシフトを推進する身としては、「我々は根本的な部分を忘れていたのかもしれない」 考えさせられました。

こうやればお客様は動くという安易な考え。経営を効率化するために全体最適を図り、業態・ブランドとしてのマーケティングを行う。

その対極にあるのが喫茶ランドリーのようなお店だと感じます。もちろん、企業存続のためには全体最適や全体としてのマーケティングは必要だとしても、以前よりも貨幣価値、ブランド価値の源泉が「信用」ということが鮮明になってきています。では、「信用」は何によって構築されるのか?それは「ヒト」ですよね。

喫茶ランドリーは周辺地域の人、また外部から訪れる人を受け入れる”1つの装置=場=空間”であり、ランドリーや喫茶などの機能が特別なわけではありません(大西氏の記事でも言及)。物理的にあるものは、まとまったスペース、ドリンク・軽食、ランドリー、ミシン、本、プロジェクターといった、どこにでもあるもの。それら1つ1つは、お客さんの最初のきっかけかもしれないけど、その場にいる人たちとの何気ないコミュニケーションを通じて、来る理由が変わるんでしょうね。

場所→コミュニケーション→縁→化学反応→また人を呼ぶ」という流れだとすると、これは私がオムニチャネルで目指したいことに限りなく近い形と一致します。物質のスペックでは差を生むことが難しい現代と未来において、「物売りとしての”価値ある体験”は何なのか?」という疑問に対して、私や業界の仲間は奮闘しています。喫茶ランドリーは一例ですが、「気兼ねなく行ける場所で、また新しい面白い企画が出てきて、それに参加する」というのは、まさにプライスレスな体験。我々、小売業界としても参考になることがたくさんあります。

何よりも、居心地が良いので、ぜひ足を運んでみてください。

※2022年追記:現在の「喫茶ランドリー」は、森下・両国、川崎、座間の3店舗になり、そのほかの連携業態も増えています。

さらにオンラインショップもできていました!


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コマースプロデューサー
川添 隆(Twitter:@tkzoe

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▼自著:「実店舗+EC」戦略、成功の法則

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