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「どうやったらAmazonに勝てるか?」ディスカッションメモ【2017年6月公開記事】

EC・DX領域で、多様な変数を柔軟に調整してバランスを整え、組織を前に進める川添 隆(Xアカウント等のSNS一覧)です。

旧ブログからのお引越し記事として転載しています。最後に2024年現在からみた考察を記載しています。
※オリジナル公開日:2017年6月26日


CMO Japan Summit 2017の公式セッションではなく、ラウンドテーブルで議論された話が脳裏に焼き付いていて、その後の私に大きく影響を与えたので共有します。

あくまでもメモとして書いています。


どうやったら「ピュアプレイ(Amazon)」に勝てるか?

【Topic】今さらオムニチャネル?今だからオムニチャネル!

メインメンバー ※2017年当時の在籍
・日本トイザらス(株) 飯田 健作さん(モデレーター)
・(株)ロフト 内海 芳雄さん
・(株)メガネスーパー 川添 隆


ディスカッションのゴールと材料

【課題設定】
どうやったら「ピュアプレイ(Amazon)」に勝てるか?
※ピュアプレイ:ネットのみで展開しているEC企業

結論:実店舗とか営業所など、リアルな顧客接点を持つ企業が勝つ!


【ミレニアル世代を知る周辺データ】

※私のメモで数字は誤っている可能性があります

以下、米国での調査

■ クリスマスの商品をどこで探すか?(複数回答)

・Amazon 43%
・実店舗 41%
・印刷物 25%
→実店舗に探しに来ている→期待値に答えなければならない

■ WEBの検索・閲覧履歴を基に接客してほしい?

・ミレニアル世代(-35) 50%
・ジェネレーションX(-55) 41%
・ベビーブーマー世代(56-) 27%
→実店舗では早く対応してほしい!→特にミレニアル世代はジャーニーがWEB(スマホ)からスタートしている→ミレニアル世代には履歴を見ながら接客するのはあり!?

■ なぜ店舗で購入するか?(複数回答)

・触りたい等オンラインで充たされない 67%
・ものすごく急いでいる 61%
・送料を回避したい 49%
→実店舗への期待がある

■誰がブランドや商品について詳しいと思うか?(複数回答)

・検索などのWEBよりも実店舗のスタッフが詳しい 68%
・私(顧客自身)の方が詳しい 44%
→実店舗への期待がある

■ 接客において、将来、人の役割をロボットが代替できるか?

Yes 28%
→代替できないと思っている人の方が多い


ディスカッション1:ミレニアル世代への対応

今後10年でミレニアル世代が歳をとり、その動向が主流になる可能性が高い


スマホ上で戦いは決する

ミレニアル世代のスマホ平均起動回数 48回/日

サーチ結果に入らないとそもそも接触できない

サーチ結果の上位2~3番目のポジションに存在しなければならない


貴重な時間は、瞬間へ

Wインカムの家族が増え、週末は希少かつ大切な時間、スキマ時間を有効に使っている

「その瞬間」にそこにあるか?なければ、ショッピングの対象にならない


店舗ロケーションがミレニアル世代に合っていない

・車をもたない世帯が多く郊外に行かない
・都市への移住(ミレニアル世代が顕著に地方・郊外から都市へ移住)

アプリなどを活用すれば生活行動ログは取得可能

スマホからジャーニーが始まるミレニアル世代の生活行動領域に入る必要がある


ディスカッション2:実店舗という強力な武器をどう活かす?

企業のPL、KPIの考え方を変える必要がある

・実店舗は販売だけでなく、ECから見れば広告の役割も兼ねる
・ECがカタログ機能の役割を果たすと、CVRは上がりにくいかむしろ低下する

・店舗の人件費や家賃は広告費や販促費などに位置付ける
・店舗自体のアシスト評価が必要(その店舗のでの購入だけでなく、他店購入での貢献を評価)
・ECにおけるCVRはKPIにはならない


ストアフォーマット、出店を含めた店舗戦略の再構築が必要

・特にミレニアル世代の影響が強い業態は、彼らの生活動線の範囲に店舗をつくる必要がある
・家賃効率を考えると生活導線上の店舗は小型がよい(サテライト店舗)
・既存店舗はフルラインナップを揃えてゆっくり見るの役割に再定義(サテライトを引き受け)
・距離の問題で引き受けできず、採算がとれない既存店が出る場合は退店候補となる

ジャーニーをどう設計するか?
スマホ→EC→サテライト店舗→既存大型店舗
スマホ→EC→サテライト店舗→EC など


実店舗スタッフにどう武器を与えるか?

・購入履歴だけでなく閲覧履歴は重要
例えば、A商品の緑を見ているかはデータでわかる、それを前提に実店舗で適切なご案内ができるか?
・実店舗側はECに依存いすぎてはいけない
例えば、実店舗で在庫がない場合は明日ECからご自宅に届ける仕組み、それに依存しすぎると実店舗の在庫発注に対して鈍感になる

スマホからジャーニーを、店舗に来店した時に途切らせないように、自社プラットフォームのデータの活用や、セールススタッフに武器を提供する


サーチ・閲覧データでMDの最適化していく

・POSデータはあくまでも結果、基本は売れたものでしか最適化されない、そこになかったものはわからない
・米国のトレンド:サーチデータ、閲覧データをPOSに入れて購入と関心を分析

欲しがっているものにMDを最適化していく必要がある
日本でも今後は閲覧データを品ぞろえに活かしていくべき


実店舗とECの価格戦略はどうするべきか?

・基本的にはECと実店舗は合わせる、双方を行き来するから
・米国では、Amazonが最安値をしかけてくる
・一般消費者が価格を知っているアイテム(KVI:known value item)は、価格で勝負しないと検索結果には表示されない=知られない

・商材によって「何で勝ちに行くか?」を明確にする必要がある
・KVIの価格戦略は投資として位置づける


コンサルティング型の商材は実店舗が有利

・情報に基づいて提案が必要な商材は実店舗が勝つ、専門店の専門性をもっているスタッフは財産
・どこでも売っている消費財=低利益率商品はAmazonに任せる、それがAmazonを苦しめる手段の1つ

Amazonも必ずそこに気づいているはずで、実店舗をもつ企業を買収したり、AIを搭載した接客型のロボットもつくっていくはず


ピュアプレイ(Amazon)は悪ではない

・この商品なら○○へ行くというような業態の認知度があれば、Amazonを見たユーザーが実店舗へ来てくれる
・カスタマージャーニーはシングルではなし自社で完結できない、複数のチャネルや情報にまたがっている

今後Amazonなどのフェアプレイで買わずに、そこから来たお客様を事前に断定し、実店舗で接客できるようになれば、かなり有効な手段となる


まとめ

2017年当時の川添考察

「今できているか?」が重要ではなく、「来る未来に対して何をやっていくべきか?」を把握していることが重要。それがわかっていれば、そこに向かっていけばよいだけで、わかっていない、理解しようとしていない場合、既存のリテールはフェアプレイに領域を侵されていく可能性が高いでしょう。

また、「接客って大事」ってのは、あらゆるリテールの経営者が言う言葉です。果たして、何人の経営者が、戦略的にその言葉を言えているか?今回のような文脈を理解し、脅威と戦っていくには、目の前のお客様と向き合う接客が最大の武器なっていくでしょう。

接客は1回1回が個別の勝負。そして、そのチャンスの度に、全く新たな販売方法を発明できることが可能なわけです。その強みを、戦略的かつ最大限に生かしていってはどうでしょう。少なくとも、Amazonが日本で実店舗を多店舗展開、もしくはリテールを買収してくる前に,(決まっているわけではないですが)。


ディスカッションの中での飯田さんの格言

「ピュアプレイ(Amazon)」に勝つには以下の3つが必要。
1.正確な情報把握に基づく優れた戦略
2.イノベーションの絶え間ない活用
3.着実な実行


その他の公式セッションについて

アジャイルメディア・ネットワークの徳力 基彦さんがまとめていただいているので是非ご覧ください。

徳力基彦 公式ブログ

特に、スターバックスの長見さんのセッションは、以後の私にとって、ブランドや顧客体験を考えていく上での骨子となっています。ブランドや顧客体験を設計していく人、全てに読んでいただきたいです。


後日談(2017年当時)

「Amazonも必ずそこに気づいているはずで、実店舗をもつ企業を買収したり、AIを搭載した接客型のロボットもつくっていくはず」と言っていた数日後、Amazonのホールフーズ買収が発表されました。


2024年現在の振り返り

Amazonの直近2022年度の業績発表がありました。

ホールフーズ事業は堅調で、業績には書かれていませんがアパレル実店舗の「Amazon Style」も増やしていくようですね。また2024年に日本でホットキーワードになるであろう“リテールメディア”の先駆者としてもAmazonは重要なポジションを占めています。

改めてマーケットプレイスとしてのAmazonを触ってみると完成度が非常に高い!それは「広告を使えばゼロからスタートする事業にもチャンスがあるという裏返しで、大手ブランドですら広告を使わないと地位が危ぶまれるリスクをはらむというマーケット」というビジネスモデルを構築していることにあります。

一方で…当たり前ですがAmazonに登録していなければ、そことは関りを持たなくてもよい。そしてAmazonからはデータをとられる心配もない。

今後も事情者とAmazonとの一見良好な攻防戦は続きそうだと思っています。

川添 隆( @tkzoe
▼自著:「実店舗+EC」戦略、成功の法則


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