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洋服屋は何を発信し、店舗の役割は何が残るのか?【UNIQLO TOKYO体験記】

ECエバンジェリストの川添 隆です。オープンから約1か月、話題のUNIQLO TOKYOにようやく行くことができました。

行く前までは「世界的な現代建築家ユニットのヘルツォーク&ド・ムーランによる商業建築」として個人的に注目していました。しかし行ってみると、ファッション業界の一端に携わる者として、感動と共に恐怖すら感じました。その感想をまとめます。

※上記の記事で内装やコーナーの様子を見ることができます。


LifeWearの“Life”とは?

UNIQLO TOKYOのコンセプトは「LifeWearの全てをここに」です。まず「LifeWearとは何か?」について、柳井正会長は下記のように語っています。

ユニクロがめざしているのは、「人々の生活をより豊かに、より快適にする究極の普段着」です。(中略)
LifeWearとは、高品質でファッション性があるベーシックウエアであり、
着心地が本当に良い、誰もが手の届く価格の日常着です。
<引用>https://www.fastretailing.com/jp/ir/library/pdf/ar2015_04.pdf

UNIQLOが目指す「究極の普段着」こそがLifeWearということでしょう。また、Lifeは「人々の生活」を指しているのではないでしょうか。

なぜこの前置きをしたかというと、「“人々の生活”に何が求められているか?それに対してUNIQLOはどのように応えようとしているのか?」というビジネスに対する意志をUNIQLO TOKYOに感じたからです。


“人々の生活”とUNIQLOの関係性

UNIQLOは常に改良を重ねていますが、「完成されたベーシックウェア」と言っても過言ではないでしょう。UNIQLO TOKYOでは、「ベーシックウェア=服=商品」を単に見せるだけでなく、今の“人々の生活”に求められることを網羅的に提示されています。
※以下の画像は UNIQLO TOKYO より引用。

◯ 昨今の重要キーワードであるサステナブル

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「服のサステナブルとは?」を提示し、デニムを生産する上で必要な水を減らす取り組みや、自社回収した服をどのように発展途上国に提供しているかをわかりやすく明示。「完成されたベーシックウェア」というモノだけでなく、その生産のプロセスや使用された服が次の人の手に渡る様子が提示されていると感じます。

◯ 人間の生活に必要なカルチャー・コンテンツ

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音楽やアートなどの人間を豊かにしていくカルチャーのコーナー提示や関連書籍の設置、1階には生活シーンを彩る生花の販売、メディア化されたUTのコーナー展開。「人間の生活に必要なコンテンツとは?」というコトが提示されていると感じます。

◯ 人間が生活しているのは“街”

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地元の老舗や名店とのコラボTシャツを発売、みゆき族・プレッピーなど銀座の街や日本のファッションの歴史などが紹介されています。店の独自性を打ち出すという観点はあるでしょうが、生活の根幹にある“街”に目を向けるキッカケが提示されていると感じます。

「服は生活するためにある。だけど、生活があってこそ服が存在し得る。」ということを暗示されているのではないかと思いました。「服を目立たせるために、こういったコンテンツを提示しているのでは?」という見方もあるかもしれませんが、それだけのためなら、各階にあれほどのスペースを使う必要もなく、コンテンツの選定含めてもう少し効率よく提示されるはずです。

店を回りながら途中で気がついたのは、「“UNIQLOが考えていること”いうようなメディア」を見ている感覚でした。それは、まさに柳井会長が目指されている情報製造小売業というカタチなのかもしれません。


洋服屋は何を発信するのか?

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これまでの洋服屋が提示してきたのは、「生活を送っていく上での個人のスタイル」ではないかと捉えています。もう一つは“情報格差”であり、欧米のコレクションで発信された“トレンド”を、時間差で「これが今のトレンドですよ」と提示することだったのではないでしょうか。

前者に関しては、今もその役割が存在することは間違いありません。しかし、スタイルを模索する時代から、一通り存在するスタイルから選ぶ時代になった中では、そのスタイルはよりパーソナルになってきました。また、後者に関してはインターネットとファストファッションの登場によって、タイムラグがなくなりました。

こういった時代背景においては、市場に迎合するブランドや顧客理解をしないブランドは苦境に立たされます。その一方で、好調なのは顧客理解をした上でのプロダクトアウトのブランドです。UNIQLO、ZARAもその一つであり、好調なラグジュアリーブランド・デザイナーズブランド、そして昨今話題のD2Cブランドもこれに該当すると捉えています。スタイルはパーソナルになったものの、モノが溢れて選択しづらくなってしまったからこそ、「選ぶ基準」を提示するブランドが力強くビジネスを展開しています。

ファストファッションにおいては、インディテックス 率いるZARAと、ファーストリテイリング率いるUNIQLOの違いも明確になってきたと捉えています。
ZARAは本来の“fashion=流行”を、世界基準でモノ・場・デジタルで伝えるブランド。
UNIQLOは人間の生活の中にある服を、モノ・場・メディアで伝えるブランド。
UNIQLO自体も“fashion=流行”を発信することをやめているわけではありませんが、UNIQLO TOKYOを見ると“人々の生活”にフォーカスしたという覚悟のようなものを感じました。

一方で市場としては、洋服屋が“服だけ”を発信する時代は終焉を迎えており、もしそこに気づかないブランドは長続きしないのではないでしょうか。


店舗の役割は何が残るのか?

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Withコロナ、Afterコロナにおいて問われ続ける“問い”の一つです。私自身は、オンラインチャネル側が苦手で、店舗側が得意な領域は下記だと捉えています。

◯ セレンディピティ(偶然の出会い)
オンラインチャネルは目的があってそこに行きます。一方、店舗は無目的に歩いていても、予想もしていなかった情報=商品に出会い、それに心奪われることがあります。現時点での役割の棲み分けでもありますが、合理的な提案はデジタルチャネル、運命的な提案は店舗(オフライン)にあります。

◯ 一覧性
画面サイズが限られるオンラインチャネルは階層構造をとらざるを得ないため、取扱う商品の全体像は読み取りづらいです。一方で店舗に行けば、どれくらいの商品があるか?自分が欲しそうなモノがあるか?が入り口でだいたい把握できます。

◯ 店格の表現(複数情報から成立する雰囲気)
人間に“人格”が存在するように、小売業界では店舗に“店格”があると言われています。店舗の品格のようなものです。ではそれは何で構成されているか?というと、内装のような物理的な要素だけでなく、取扱う商品や販売スタッフ、接客、他のお客様、空気感などの複数の要素が入り混ざったものだと捉えています。残念ながら、オンラインチャネルではまだ“店格”を表現できていないと感じています。

ここまでは常日頃考えていました。しかし、Business insiderの記事で松下久美さんが記された下記の文言はささりました。

リアル店舗は「インスピレーションを与える場所」に

セレンディピティに近いですが、UNIQLO TOKYOの各階にはインスピレーション(直感・気づき・アイデア)がありました。これは、今後の店舗においても重要な役割となるでしょう。

一方で、現物確認(手に取る・試着)、私だけのための接客はオンラインチャネルでも実現ができるようになってきています。前者は配送でも可能ですし、後者はZoom接客でも可能です。オンライン接客とオフライン接客のそれぞれのメリット・デメリットはありますが、没入感・時間の贅沢感・手持ちの服とのバランスを確認できる点においては、むしろオンラインが優っていると体感しています。

「やっぱり、人が接客しなきゃ・・・」すらもオンラインでできるようになった今、企業側として「何となく店舗の方が、ECより優れているよね」では通用しません。

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中目黒のSTARBUCKS RESERVE® ROASTERY TOKYOは巨額の投資をしたアトラクション型の店舗と言えますが、UNIQLO TOKYOは立体的なメディア型の店舗のようなイメージです。しかし巨額の投資がなくとも、その場でしか味わえないよつな劇場的な場、秘密を共有する場、親近感を味わえる場、発見のある場などをつくることは可能です。

店舗に関わる全ての人はこの課題感を持ち、少しずつでも工夫をしていく必要があると再認識しました。

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コメント (2)
素晴らしい論考ですね。私も行かなくちゃ。
@富永さん 読んでいただき光栄です!ありがとうございます。
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