在庫過多と売り逃し。どちらのリスクを見るか?【2016年11月公開】

EC・DX領域で、多様な変数を柔軟に調整してバランスを整え、組織を前に進める川添 隆(Xアカウント等のSNS一覧)です。

旧ブログからのお引越し記事を基に、2024年時点での修正しております。
※オリジナル公開日:2016年11月29日


深夜のコンビニのホットスナック論

深夜のコンビニにおける、ホットスナックは在庫過多のリスクが高いのか?それとも売り逃しの方があるのか?というのは気になるところです。

飲み終わって帰る22〜24時ごろに、小腹が空いてコンビニに立ち寄ると・・・ホットスナックがない!

そんな経験はないでしょうか?(数年間同じ経験をしています)私は近くのコンビニ数店で毎回その経験をしてきました。

コンビニの場合フランチャイズ運営が基本なので、その店のオーナーの方針によりけりなのだと思います。時間帯の売上データがあった上で、客数が減る深夜帯にホットスナックを並べるのは、廃棄リスクの方が高いということだと考えられます。また私は詳しく理解していないですが、一度に作るロットの問題もありそうですね。

一方、現時点の時間帯別の客数・売上データはあったとしても「売り逃しデータ」はないのではないでしょうか?


売り逃しのデータ化は難易度が高い

コンビニエンスストアに限らず、店舗型小売業において「売り逃がし」はデータとして存在しません。とっている企業もあるかもしれませんが、2024年現在でも私は知りません。Eコマースでは再入荷リクエストの機能で一定程度把握はできますが、「今あったら買ったのに」と「再入荷したら欲しい」はニーズが異なるので売り逃しの把握としては弱いと思っています。

実際、コンビニの売り逃しについて、当時のファミリーマートの社長が言及されています。

「菓子パン、売り切れが目立ちますね」。ある店舗を視察中、沢田社長が表情を曇らせた。完売は喜ばしいことだが、商品の発注が足りていなかった裏返しでもある。コンビニ本部は売り上げ減少につながる品切れを嫌う一方、加盟店は売れ残りのリスクを恐れて発注には慎重になりがち。それでも店舗に発注増のメリットを訴えかけ、理解してもらうのがSVの仕事のはず。この店では、この「基本」が徹底されていなかった。

ファミマ社長の「気合い注入」現場を見た | 日経ビジネスオンライン
https://business.nikkei.com/atcl/opinion/15/221102/111600356/

時間帯や商品ごとの販売データに厳しいコンビニが、夜中のホットスナックに気づいていない、または気づいてはいるものの手を打てていない可能性は現在もあるのもしれません。直営・フランチャイズであれば「判断に人が介在する」のであれば、必ずこういった「売り逃し」は起こり得ると考えています。

近年は「在庫を極力持たない」「売らない店」など、在庫の最小化が注目されていますが、仕入不足(機会ロス)は小売りにとって致命傷であることは間違いありません。


在庫最適化と売り逃しの対策を考える

テクノロジーを使って需要予測の精度をあげる、または値引きをコントロールして在庫を最適化する方が、現実解が見出せているので優先度は高いでしょう。

一方で、店舗で売り逃しを収集するとしたら、以下の方法が考えられます。

・「○○ってないんですか?」という実際の質問の数を収集する(店員が把握するか、音声AIで収集するか)
・什器にカメラを設置して映像から収集する(表情や行動を特定する必要あり)

「そういうソリューションがあったらやってみよう」も悪くはありませんが、客数が限られる専門店であれば一定期間・抽出した店舗だけでも情報収集すると、対策の解像度は高まるはずです。

またECサイトに関しては、再入荷リクエストボタン以外に「欲しかったボタン」というような案もありそうです。

いずれにしろ、「今あれば買ったのに」というニーズや事情があることは間違いありません。ということは、小売業はまだまだ売上があがるチャンスを秘めているということでしょうね。この領域の発展は期待しているところです。

川添 隆( @tkzoe
▼自著:「実店舗+EC」戦略、成功の法則


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